生活者は「何」を起点に「ウェルビーイング」な状態になるか?

博報堂の持つフィロソフィーとしての「生活者発想」を考えたときに、生活者一人ひとりに新たな価値を提供し、よりよく生きられる社会を実現していく営みをどうやってつくっていくか、毎日考え続けている。

博報堂生活総合研究所の調べでは、70%前後が「幸せ」20年間横ばい

博報堂生活総合研究所(通称:生活総研)の調べによると、日本人に対する「あなたは幸せですか?」という質問に「幸せ」と答えた人の割合は、2020年は74.6%。男女差では、女性の方が約5ポイント高い結果となったが、地域差はほとんどなく、20年以上ほぼ横ばいとなっている。年代別に見ると、30代が79.7%で全体より約5ポイント高く、逆に50代は、全体より約5ポイント低い69.7%となっている。
この数値を見る限り、日本人は主観では「幸せ」と感じている人が多いことが分かる。
データ出典:博報堂生活総研による定点調査。28年分の生活者観測データ約1,400項目を公開中。
https://seikatsusoken.jp/teiten/answer/5.html

生活者にとって、「幸せ(ウェルビーイング)」とはなんだろうか?

ある人は、お金持ちになることと言うだろうし、ある人は夢がかなうこととも言う。家族が健康であれば幸せ、安心安全な街で住んでいることだけで幸せ、毎日のご飯をおいしく食べられているだけで幸せと言う人もいる。さらには、自分が体験した中で、子どもが生まれたときや、受験に合格したなど何かに成功したときが一番の幸せだったという人もいる。
そもそも、生まれ育った環境や、一人ひとりの価値観が違うのに、国や団体が決めた画一的な「幸せ」に当てはめてしまって良いのか、という疑問がある。一人ひとり「幸せ」を感じる因子は多種多様であっていいのではないか?

主観的ウェルビーイング診断指標「生活者ウェルビーイング21因子」を博報堂が独自開発

今まで、「客観的ウェルビーイング」(GDP、年収、健康診断、健康寿命など数値として獲得できるもの)で分析が行われてきた。そこにコロナ禍、一人ひとりがポジティブに生きようとする「主観的ウェルビーイング」(生活者一人ひとりが幸せに感じるかどうか)の重要性が増してきている。

多様性の中に生まれた博報堂開発の診断指標「生活者ウェルビーイング21因子」

生活者一人ひとりウェルビーイングになるために違う因子をもつのが当たり前、という前提で動き出したBetter Co-Beingプロジェクト。本プロジェクトの研究成果として生まれた「生活者ウェルビーイング21因子」は、生活者一人ひとりの主観的ウェルビーイングの傾向や状態を客観的な数値で可視化・分類できる博報堂が開発した独自指標である(※下記ニュースリリース参照)。コロナ禍で阻害されていた人々の関係性や自律性を取り戻し、生活者それぞれのウェルビーイングを実現する共同研究や事業開発を加速させるため、専門家との検討や調査分析を通じて開発した。大きく3つの分類をすると同時に、それぞれ7つの因子の掛け算で、一人ひとりのウェルビーイングを可視化していく試みである。

(※関連ニュースリリース)
博報堂ミライの事業室、ウェルビーイング診断指標「生活者ウェルビーイング21因子」を開発 生活者一人ひとりのウェルビーイングを実現するための共同研究や事業創造に活用
https://www.hakuhodo.co.jp/news/newsrelease/94109

【生活者ウェルビーイング21因子】

生活者ウェルビーイング21因子

「ウェルネス」=心と身体の健康を維持・向上すること。適度な運動、自然との触れ合い、良質な睡眠など。
「ニューネス」=人や物・体験との新しい出会い・学び・気づき。おいしい食事、有意義な時間など。
「コミュニティ」=地域の人、仲間、家族と関係性を高め、絆を深めること。信用・信頼、感謝・賞賛など。

コロナ禍、生活者が求める「感謝・賞賛」因子

実証実験や調査などを通して、全体の21因子の中では「良質な睡眠」「感謝・賞賛」の因子は、ほとんどの生活者が生活する上で大切と重視していることがわかった。それ以外にも、「バランスいい食事」よりも「おいしい食事」、さらには「誰かといっしょに食べる」ということがウェルビーイングをつくる上で重要と考えていることが分かった。コロナ禍の調査ということもあるが、「コロナ自粛疲れ」「脱現実」「非日常」「つながり」に関連する因子が強く出ていると感じるデータが見受けられた。
その中でも面白い傾向が出てきたのが、ある一定の割合で、利他の意識が一番高く、他人からの「感謝」などでウェルビーイングが高まる生活者がいることだ。まさに私が理想としている、利他社会の実現がウェルビーイングな人を増やしていく社会の実現につながる生活者が出てきているのだ。

生きるをつなげる。生きるが輝く。そんなミライをつくるために。

今回、我々が理想とするウェルビーイング社会の実現のために、主観的ウェルビーイングのデータを取り続けてきた。データを見ながら、いろいろな発見があった。
毎日、自分たちのウェルビーイングを振り返ることで、レコーディングダイエットと同じように、主観的なウェルビーイング総量がアップすることも分かった。睡眠に関しては週末のほうがよく眠れたという人が多いのと、週末のほうが充実した時間を過ごしていることも大きいことからウェルビーイングな人が増えている。逆に、平日は働いている人を中心にストレスや睡眠不足、慢性疲労を抱えている生活者も多い。そういう人たちのウェルビーイング因子を分析し、それぞれの傾向にあったサービスが開発・紹介されることで、多くの人がウェルビーイングな状態をつくっていけるようにすることの必要性も感じた。

これらの生活者の日常「生きる」のデータをつなぎ合わせ、一人ひとりの「生きる」がより輝く社会へ。そんなBetter Co-Beingな社会をつくっていくために、3つの行動指針が重要になってくることも考えさせられた。

1: ポジティブ(前向き)に考え、行動すること
2: 透明性をもって、オープンでいること
3: 相手を敬い、相手の気持ちを考えること

まずは、今日から私自身が、ウェルビーイングな状態になって、まわりもウェルビーイングに巻き込める生活を送ろうと思う。そうすることで、ウェルビーイングの総量が増えていき、Co-Beingをつくっていけると信じている。