変革期をむかえつつあるエンタメDX市場

新型コロナウイルス感染拡大の影響により音楽、演劇を中心とするライブ・エンタメ業界では数多くの音楽フェスや舞台公演が中止・延期を余儀なくされ、数多くのアーティストや俳優陣が一時的な活動休止状態に陥り、歴史ある中小規模のライブハウスも次々と姿を消していきました。

リアルイベントの実施が難しくなる一方で、エンタメDX市場は変革期を迎えたような気がします。これまでほんの一部のタレントしか取り入れてこなかった「投げ銭システム」を導入したライブ配信や、既存のファンクラブ制度を一新したファンコミュニティマーケティングの立て直しなど、SNSを通じた新たなファンとの接点を生み出すことで、若年層を中心としたマネタイズポイントの開拓を進めてきました。

成長スピードが目覚ましいD2F事業(Direct to FAN)

特に、新しいファンコミュニティの価値提供に重きを置いたオンラインサロン型プラットフォームやファンコミュニティサービスの事業成長スピードは目覚ましく、俳優の山田孝之氏と一緒に学ぶ・実践するコミュニティサイト『原点回帰』や、クリエイティブの表舞台と舞台裏を覗くことができる蜷川実花氏の『蜷川組』など、音楽に限らず多くのタレントの間でファンコミュニティの立ち上げが進んでいます。ミライの事業室ではこれらのファンコミュニティマーケティングに特化したサービスジャンルをD2C(Direct to Consumer)になぞらえD2F(Direct to FAN)と呼んでいます。

ミライの事業室が注目するD2F事業

ミライの事業室では数年前から上記「D2F事業」の数多くの取り組みに注目してきました。

従来から存在する有料会員制ファンクラブは組織からファンに向けた一方的な情報提供の場として使われることが多く(例:出演メディア情報、ライブ情報、チケット購入先の案内など)、その用途は非常に限定的で、ファンは一般のファンよりも一歩早く情報を手にするために年会費を支払っていました。それとは異なり、D2F事業の中で実施されるファンコミュニティでは、一般の目に晒されている通常のSNSでは難しい「タレント本人」と「ファン」とのインタラクティブなやりとりが有料会員制というクローズド空間の中で実現されました。

コミュニティの内部では、ファンコミュニティ限定のライブ配信が数日置きに実施されたり、抽選で選びぬかれた数名のファンとタレント本人によるリアル参加型イベント、またはZOOM等の映像配信サービスを利用したオンライン参加型イベントに参加できたり、ファン自身がコミュニティ運営に積極的に関与できるようになりました。その他、通常ではありえない、コンテンツ制作の裏側を垣間見ることができるなど、ファンからのコンテンツ自主提案も可能になりました。

コミュニティ内のコンテンツが充実するだけでなく、サービス自体の収益性を上げるため、タレント⾃らが既存のオープンなSNSに依存せず、タレント自身のメンタリズムに合わせた⾃由なビジネス展開が可能となり、リアルライブが難しいコロナ禍でもファン離れを防ぐことができるようになりました。

コロナ禍の窮状を脱するべく始まったD2Fマーケティング活性化の潮流は国内外で広がり、BTSをはじめ多くの大物アーティストによって理想モデルの形成が進んでいます。
今後もこの“D2F”の市場規模はますます拡大していくことが予想されます。ミライの事業室としても引き続き、注目していきたいと思います。