まず、メーカーと一言でいっても大きく消費財と耐久財に分類されます。

耐久財……自動車、家電、医療機器、検査機器、カメラなど、1日、1ヶ月くらいでなくならないもの
消費財……ティッシュ、アルコール、シャンプーなど1日や1か月くらいで使い切るもの

消費財、耐久財それぞれのポイントと、共通のポイントについて解説していきます。

消費財・耐久財メーカー共通の新規事業コンサルティングポイント

消費財と耐久財が共通で取り組まなければいけないのはサービスデザインです。

このとき、1点だけ重要視しなければいけないのは製造業におけるサービスデザインの進め方としてはサービスデザインの教科書は参考にならないということです。矛盾しているように聞こえますが、一般的なサービスデザインの教科書が想定している状況が製造業の置かれている状況とまったく異なります。

誤解を恐れずに書くと、サービスデザインとは「そのサービスを使った結果、自社の消費財や耐久財が売れなくてもいい」という前提でサービスをデザインする考え方です。
そのため、サービスデザインの教科書を見てそのままサービスやステップを作ると、上申したときに「これはうちの商品が売れなくなるのでは?」と言われたり、単なるキャンペーンやPRに見えてしまいがちです。

これは一般的なサービスデザインの教科書を見て、サービスを先にデザインしてしまうことが原因です。メーカーの場合、消費財や耐久財が売れ続けるための新しい習慣を創造するためにサービスを作る必要があるため、通常のサービスデザインのプロセスとは異なるワークデザインが必要となります。

また、基本的にメーカーの消費財や耐久財は、卸しやEC、製造小売りモデルというビジネスモデルを使っていますが、そのビジネスモデルにサービスを組み込むということは、売り方やお金のもらい方が変わるため、我々は新規事業と捉えています。

もちろん、新サービスデザインではビジネスモデルは変わらないと考える方もいるかもしれませんが、新規事業立ち上げの枠組みで捉えた方がスムーズに進むと考えています。

消費財メーカー発の新規事業推進のケース

消費財の場合、すぐに使うのものなので、サービスを使い続けた結果、さらに商品が売れなければいけません。

そのため、最近もっとも多い事例は、消費財とIOTデバイスを組み合わせるパターンです。ただし、最初からIOTデバイスを作るためのプロセスで作ると商品とは関係なくなってしまうため、あくまでIOTデバイスを使い続けた結果、消費財がどのように売れていくのかというフレームワークを活用します。

たとえば、製造小売りモデルの場合「商品を作り、店に置いて、消費者が購入する」というモデルになっていますが、サービスを組み合わせることで間に他の人も入ってきます。

つまり、
①サービスを考える
②そのサービスを実現するためのハードウエアを考える
③さらに消費財が売れるようになる

以上の3つを考えるのがフルスペックの消費財メーカーのサービス系新規事業開発になります。

ハードウエアはいったんおいておいて、サービスと消費財だけを考えることも可能です。

この方法でステイクホルダーを見つけながら、一緒にハードウエアやサービスを作っていくという部分をこのように進めると、通常とは全く異なる観点で研究開発で向上すべき性能が見えてきます。

耐久財メーカー発の新規事業推進のケース

ハードウエアのメーカーに関しては消費財が絡んでくることはあまりないため、もっとシンプルです。

ハードウエアメーカーがサービスに必ずプラスしなければいけないのはコミュニティで、サービスを使う人たちをいかにコミュニティ化できるかが重要になります。

たとえば、ある電子機器のプロジェクトでは、すでにハードウエアを持っている方々のオンラインのコミュニティを作っていますが、一番最初のPoCの立ち上げをすべてオンラインで行わず、オフラインで説明会を行ったり、ドミナントに23区のあるひとつの区に限定し、オフラインでコミュニティを仕掛けていくという方法をとりました。

ハードウエアメーカーの方がサービスを作ろうとする場合、すべてオンライン上で作らなければいけないと思いがちですが、場合によってはオフラインでのコミュニティ作りとサービス構築が必要です。

これらをPoC、PoBと連結してサポートし、推進していけば、新しいビジネス創造につながって行くことでしょう。