新規事業を立ち上げの際の課題はいくつかありますが、立ち上げの担当者がいちばん考えなければいけないのは人とお金についてです。

人について、社内で誰を入れるのか、社外から誰を入れるのかについてはこちらの記事で解説済みです。
失敗しない新規事業部の立ち上げ方①「アイデアも人材も経験豊富な外部の人間を入れて新規事業を回していくべき」

また、お金に関して、予算をどのようにとるかという話もこちらでしています。
失敗しない新規事業部の立ち上げ方④新規事業を進める際の予算の立て方【前編】
失敗しない新規事業部の立ち上げ方⑤新規事業を進める際の予算の立て方【後編】

今回解説するのはさらに細かい実務的なテクニックについてです。
新規事業立ち上げと一口にいっても、自分が実行するのか、新規事業の実行支援をするのかでまったく異なるという話はこれまでも説明していますが、今回は新規事業を実行する立場になった場合について解説します。

新規事業の予算は2倍、実行は1/2の金額で

まず、新規事業を社内で回すための予算について、アドバイスしたいのは「必要だと予測される金額の2倍に設定する」ということです。

新規事業を始めると、ほとんどの場合、自分たちが予想もしていなかった出来事が起こります。しかし、未来に起こるかどうか分からないことに予算立てはできません。だからこそ、何かあった場合に対応するために今考えられる予算を倍にしましょう。そうすることにより、倍のバッファの中で予期せぬ出来事に対応できるのです。

予算を倍で立てたということは倍の余裕があるわけですが、たとえば、仮にスペースを借りるのに最初は20万円の予算を考えていても、実際は回線やセキュリティなどにも諸経費が必要で、20万円を超えてしまう可能性があります。そのため、「20万円くらい」と思った場合はひとまず倍の40万円で申告し、実際には10万円でおさまるように意識して進めていきましょう。

もちろん、どこかでアクセルを踏んでお金を使うときは使っていくことも重要ですが、これが新規事業の立ち上げ時にお金を減らさないポイントです。

ほかにも、たとえばロゴを作ることになった場合、10万円の予算であれば20万で申告します。そして、「5万円でやらなければいけない」と自分に課題を課すことで、何かと組み合わせて5万円にしてもらったり、プロに頼まず、美大生など名前を売りたい人に頼むなど、どんどんクリエイティブなアイデアが生まれてくるのです。

つまり、ポイントはこの2つです。

一方、新規事業で人を雇うことに関しては、お金をケチってはいけません。先ほどの考え方で自社の人を雇うと確実にブラック企業になってしまいます。

外に対して発注したり、予算を執行したりする場合は予算の1/2という考え方が大事ですが、自社の仲間に関してはできるだけお金を使いましょう。

外に出す予算を1/2にした分、社員の給与を高くしてモチベーションの高い優秀な社員を雇う、社員と合宿するお金に使うなど、先ほどとは真逆の考え方をします。

仲間のモチベーションが上がって仲間にお金が落ちるような経営をしていくことで、必ず仲間が増え、内部に力が溜まっていきます。

新規事業の立ち上げの際はこのようなお金の使い分けを意識するとよいでしょう。

新規事業の立ち上げ序盤ではあえてスケールしないことをやる

新規事業立ち上げの際、もうひとつの課題としてあげられるのは、いわゆるスケーラビリティの問題です。

よく「スケールする事業をやれ」といわれますが、立ち上げ時にスケールを目指すべきか、目指さないべきかということも課題としてあげられます。

答えとしては、一番最初は絶対にスケーラビリティを目指すべきではありません

私たちがSEEDATA立ち上げの際に意識していたのは、とにかく立ち上げ時はスケーラビリティのことは考えず、自分たちにしかできない熱狂的なことをやろうということでした。

新規事業の立ち上げ時は、手作業でやらなければいけない部分が多くても、とにかく熱のこもった熱いことをする。サービスデザインでもプロダクトデザインでも、オーバークオリティでもいいのであえてスケールしない面倒なことをして、とにかく最初のユーザーに熱狂してもらえるようなものに、フォーカスできるかどうかが重要です。

ただし、これは自社や内部での約束事であり、それを外に言う必要はありません。社内起業であれば、会社に対してはスケールすることに取り組んでいるように見せておく必要があります。

事業立ち上げにおいてスケールは結果でしかなく、目的ではないということを頭に入れておきましょう。本質としては熱狂できるもの、熱がこもったモノを作っていくことが最終的にスケールするのであって、中での約束事と外での言い方は真逆で考えることが大切です。

今回お話したお金の使い方とスケーラビリティの問題は、新規事業の立ち上げ時によくみられる課題なので、しっかり意識しておくとよいでしょう。